航空会社がフライトコンテンツを配信・販売する方法を変革するために航空業界向けに構築されたデータインターフェースであるNew Distribution Capability(NDC)の展開は、航空会社がNDCのオファーと採用活動を拡大するにつれて、2023年に大きな勢いを得ました。
ほとんどのNDCコンテンツは、異なるチャネルを通じて提供されるとはいえ、確立されたEDIFACT(Electronic Data Interchange for Administration, Commerce, and Transport)コンテンツに類似しています。また、航空会社は、パーソナライズされたオファー、ダイナミックバンドル、その他のサービスなど、新しいコンテンツの開発を続けています(詳細は後述)。ただし、今日のNDC運賃とEDIFACT運賃には、目に見える実質的な違いが1つあります。
では、無段階運賃とはどのようなもので、この新しい価格戦略はあなたの企業の出張プログラムにどのような影響を与えるのでしょうか?またダイナミックプライシングとの関係はどのようなものでしょうか?これらの疑問を解決するために、まず航空会社の価格設定が過去数十年の間にどのように進化してきたかを探ってみましょう。
従来の航空会社の価格設定
民間航空の初期段階では、アメリカ政府によって規制されていたため、航空運賃は、路線や航空会社によって均一でした。1978年に議会が航空規制緩和法を可決し、航空会社が運賃と路線を独自に設定できるようになった後、航空会社の価格設定に革命が起こり、アメリカン航空がその先頭に立ちました。当時の社長であったロバート・クランドールは、イールドマネジメント(航空券収入と座席占有率を最大化するための価格最適化手法)の先駆者として知られています。やがてこの手法は、今日の航空業界全体で使用されている、より広範な収益管理戦略を含むまで成長しました。
需要と供給は、航空会社の価格戦略に大きな影響を与えます。航空会社は、航空運賃を安く設定し過ぎると、お金を置き去りにすることになりかねず、逆に高く設定し過ぎると、空席が半分になってしまうかもしれません。そこで、新しい価格設定モデルの一環として、航空会社は、支払い意思額(WTP)に基づき、さまざまな顧客層のニーズに応えるために、異なる価格帯を設定し始めました。例えば、航空会社は、早めに予約し、旅行日程に柔軟性がある人(価格に敏感なレジャー旅行者を想定)には、より安い運賃を提供できることに気づきました。次に、日程が確定した後からの予約者(一般的に、価格に寛容なビジネス出張者)には、より高い価格を表示することができるということにも気づきます。
さまざまなタイプの旅行者に合わせた幅広い料金を提供するため、航空会社は、客室クラス(例えば、ビジネスクラスとエコノミークラス)を運賃クラスに分けるシステムを導入しました。これらの運賃クラスは、「運賃バケット」または「予約クラス」とも呼ばれ、特定の価格レベルを表し、独自の条件(航空券の払い戻しが可能かどうか、土曜日の宿泊が必要かどうか、獲得できる特典マイルの数など)が付いてきます。
航空会社の収益管理技術が高度化するにつれ、航空会社は、様々な販売チャネルと共有される増大するデータを交換するための標準化された方法を必要としていました。
EDIFACTの導入
EDIFACTは、1980年代から航空業界で採用されているデータ交換規格で、運賃、スケジュール、空席状況などに関する情報を効率的に伝達します。
EDIFACTシステムでは、航空会社は事前に航空運賃をATPCO(Airline Tariff Publishing Company)に申請しなければなりません。ATPCOはその情報を、グローバルディストリビューションシステム(GDS)やその他の旅行アグリゲーターを含む様々なルートを通じて配信し、その後、旅行管理会社(TMC)や旅行販売業者に転送します。
出張者がフライトの予約を決定する際、TMCはATPCOで現在申請されている運賃に基づいた固定メニューを提示することができます。ところが、この決まったメニューでは、航空券の最適価格が2つのRBD(Reservation Booking Designator:運賃クラスを表す英数字コードの略称)の間にある場合、航空会社が代替オファーを作成する能力が制限されます。
1990年代には、クラスベースのダイナミックプライシングが導入され、収益管理戦略はさらに洗練されたものとなりました。航空会社は、高度なアルゴリズムとリアルタイムのデータ分析を採用し、需要の変化だけでなく、市場の状況、競合他社の価格設定、予約動向、その他の要因にも対応して、航空券の価格を動的に調整するようになりました。
2000年代に入ると、航空会社はATPCOに運賃を1日1回ではなく1時間に1回申請できるようになり、多くの航空会社が「ブランド運賃」としてサービスをまとめ始めました。また、「アンバンドリング」と呼ばれる、基本運賃以外の付帯サービス(受託手荷物や機内食など)に対して追加料金を請求するアラカルト料金システムも流行しました。
収益管理戦略と顧客の期待が進化し続ける中、業界はEDIFACTの限界に対処する新たな価格ソリューションを模索していました。
NDCの導入と無段階運賃
2012年、航空業界の世界的な業界団体である国際航空運送協会(IATA)は、ウェブベースのXMLデータプロトコルをベースとした、NDC(New Distribution Capability)と呼ばれる代替データインターフェースの開発を開始しました。
NDCを利用することで、航空会社はATPCOに運賃を事前に申請する必要がなくなり、ショッピングの際にその場で無限の組み合わせを生成する柔軟性が得られます。この設定は、航空会社にとって、特定のアメニティやサービスを特定の価格で提供し、そのすべてを強化された顧客データに従ってカスタマイズすることができる、完全にダイナミックなショッピング体験を作り出すための重要な基盤要素です。
この新しいテクノロジーによって、航空会社は無段階価格設定として知られる、より高度な航空運賃のアプローチを採用できるようになりました。ダイナミックプライシングの進化形である(この2つのフレーズが同じ意味で使われることもあります)無段階運賃は、在庫ルールや運賃クラスによる制約を受けないため、航空会社は実質的に無制限の価格帯を提供することができます。
ダイナミックプライシングは、出発までの時間や現地滞在期間など、チケット購入時に分かっている様々な詳細を活用して、必ずしも追加の個人情報を入力する必要なく航空運賃を決定することができます。無段階運賃により、航空会社は不定の価格帯を提供し、需給と顧客のWTPに応じてリアルタイムで航空運賃を調整できる可能性があります。理論的には、競合他社の運賃や購入時の市場状況に基づいて、XYZ便の17B席の価格を下げたり上げたりできることを意味します。
出張管理プログラムへの影響
無段階運賃は、企業の出張プログラムにとって良いことなのか、悪いことなのかという質問をよく受けます。どの航空会社が運賃を提供しているか、主要路線の競争率はどうかなど、さまざまな要因によって異なるため、答えは一概には言えません。出張管理者は、無段階運賃が自社のプログラムに具体的にどのような影響を与えるかについて、当社のコンサルティングチームと協力していただき、深い洞察を得ることをお勧めします。
一方、考慮すべき重要な点は以下の通りです:
基本的に、無段階運賃は、航空会社にとって、収益を上げるための収益管理ツールです。NDCチャネルで最安値の運賃や限定のお得な情報を見つけることはよくありますが、これはNDCを通じてよりお得であるという認識を持ってもらうという、新システムの採用を促進するための航空会社の意図的な戦略である可能性があります。
例えば、デパートのセールのようなものだと考えてください: 100ドルのコートが10%引きで90ドルになっているとしましょう。ただ、3ヶ月前の正規価格は90ドルだったらどうでしょう。航空会社は、NDC運賃をより魅力的に見せるために、EDIFACTとNDCのコンテンツで同様の戦略を取ることができます。コートのセールのように、このようなセールは見せかけかもしれません。
無段階運賃により、航空会社は業界で強い存在感を示している路線で利益を最大化することができます。「レモンを絞る 」とよく言われる戦術です。逆に、航空会社は、より多くの顧客を惹きつけるために、大きな競争に直面している路線の価格を下げるかもしれません。
より多くの旅行者情報を収集する
出張管理者は、NDCコンテンツを予約する際、航空会社が出張者の貴重なデータを収集できる可能性があることを認識しておく必要があります。航空会社が顧客についてより多くのデータを収集できればできるほど、どの顧客層がフライトを予約しているかを判断し、それに応じた価格やパッケージを提供することができます。
NDCは航空会社に顧客の予約習慣に関するより深い洞察を提供する一方で、EDIFACTの標準化されたファイルされた運賃から、標準化されていない継続的な価格設定環境へと移行することで、法人顧客にとっては透明性の低い価格設定となる可能性があります。その結果、出張の予算を立てたり、NDC運賃に企業割引が適用されているかどうかを評価したりすることが難しくなる可能性があります。
これらの事実はすべて、航空会社のウェブサイトから直接予約するよりも、マーケットプレイスを利用して航空会社のオファーを比較検討することの重要性を示しています。また、信頼できる出張管理パートナーと協力する利点が今後増大だろうという点も示しています。アメリカン エキスプレス グローバル ビジネス トラベル(Amex GBT)は、オファーの比較検討においてお客様を守り、複雑さを回避し、出張管理プログラムの価値を最適化するお手伝いをいたします。
航空会社がNDCの在庫を持っているからといって、自動的に無段階運賃が導入されるわけではないことにもぜひ留意してください。無段階運賃を導入するには、多大なインフラと投資が必要なため、航空会社にとってはしばしば社内的な課題が生じることがあります。とはいえ、NDCが本格化し、航空会社が技術的な枠組みを変革し続けるにつれ、無段階運賃を収益管理戦略の重要な要素として統合する航空会社が増えることが予想されています。
将来期待できることとは?
出張管理者は、今後のさらなる変化に備える必要があります。例えば、航空会社はダイナミックバンドル(Dynamic Bundling)と呼ばれる、サービスや商品のパーソナライズされたパッケージを作る方法を模索しています。このアプローチは、無段階運賃の概念に基づき、適切な商品を適切な顧客に適切な価格と時間で提供することに重点を置いています。最初の運賃表示から購入の瞬間まで、予約プロセス全体を通して価格を微調整することで、航空会社は収益をさらに最大化することができます。
さらに、IATA の One Order イニシアチブは、既存の旅客サービスシステムを注文管理システムに置き換えることにより、予約、発券、配送、会計プロセスを 1つの注文に簡素化することを目的としています。この新しい技術により、航空会社は様々な属性に継続的な価格戦略を適用することができるようになる(例えば、バンドル内のラウンジ利用料を調整するなど)。これらのプロセスを合理化し一元化することで、One Orderは航空会社により正確でリアルタイムのデータを提供し、よりダイナミックで効果的な価格戦略を可能にします。
Amex GBTのコンサルティングチームと連携して、最新の航空小売業の複雑さを理解し、進化し続けるテクノロジーに対応できるよう貴社の出張管理プログラムを準備することをお勧めします。
Amex GBTは、出張、経費、ミーティング&イベントのためのソフトウェアとサービスのリーディングカンパニーであり、NDCに全面的に取り組んでいます。NDC運賃の予約チャネルへの統合、トラベルカウンセラーのトレーニング、新しい技術標準への対応など、企業のお客様により良いサービスを提供するために、多大なリソースと数百万ドルを費やしてきました。また、NDCとOne Orderが出張者にもたらす付加価値や機能を提供するため、航空会社パートナーやテクノロジープロバイダーとの協力も続けています。
法人のお客様のニーズを満たすNDC予約体験をどのように構築しているか、詳しくはこちらをご覧ください。
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