航空会社の整理統合はここ20年ほど行われています。この10年は巨大な合併により大きなアメリカの航空会社は9社からアメリカン航空、ユナイテッド航空、デルタ航空、サウスウェスト航空の4社になりましたが、これら4社の総飛行マイル数はアメリカの航空会社全体の82%を占めます(CNN Money 2017年4月11号参照)。その他、価格力を与えるジョイントベンチャー航空会社(訳注:複数の航空会社により設立される共同販売会社、単なる提携関係より一段深化した航空会社間の提携の形)が大西洋から太平洋に拡大し、アメリカ国内にも広がっています。
巨大な合併企業とジョイントベンチャーが存在する整理統合された航空業界の環境下では、企業側で利用指定する航空会社の数や割引料金(コスト削減)、その一方で航空会社から企業に課せられる目標の達成を管理したり、シェアのバランスを取ることが難しくなっています。
企業は今や世界全体に広がる出張先をカバーする様々なシナリオや問題、機会などに直面しており、航空会社の契約を管理することに、より多くの時間、費用、労力を費やしています。
成熟した企業航空出張プログラムでは既存のサプライヤーからのコスト削減額を増加させ続けるのは難しいでしょうし、調達部門の従来の測定方法は旅行業界には必ずしも当てはまらないかもしれません。コスト削減は出張パターン、目標の達成度、航空会社の路線別収益および全体の収益性にも左右されますが、企業がコントロールできるのは、前2つの要因だけです。
また2018年の航空業界の順調な見通しにより値上げが予想されるため、出張予算は抑制圧力がかけられるでしょう。2017年12月にIATAがリリースした予測によると、2018年の国際航空業界の純利益は384億ドルまで上昇し、2017年の純利益の345億ドルを超えると見込まれています。搭乗者収益データは、運賃の下降傾向が底入れしたことを示しており、航空会社の運賃値上げを後押しする圧力となっています。
成熟したマーケットにいる企業は、外的な力がどのように航空業界に影響を与えるのか理解することで自分たちのマーケットでのポジションを強化し、航空会社から最大限の価値を得るために組織としてまとまりのある戦略を練ります。
ひとつの戦略としては、最大の割引を得ることができ、かつ価格以上の付加価値を提供してくれる少数の航空会社に支出先を絞る方法です。また進化するジョイントベンチャーやジョイント契約により割引価格の適用範囲を拡大することができます。ひとつのジョイントベンチャー契約で8社の航空会社をカバーすることも可能です。
すでに高い割引レベルと目標設定のある成熟した企業は、大きなボリュームを利用して交渉し、支出先の整理をすることで、削減率は低いかもしれませんが、追加の削減ができるかも知れません(平均的に0.5%から1.5%程度です)。割引率を上げても選ばれたいという航空会社を選ぶことで競争的な状況を作り出し、追加の削減を可能にできるかも知れません。
例えば、競合路線では、3社の航空会社よりも、2社を選ぶ方が良いでしょう。企業の支出パターンが独占的な航空会社に偏っているのであれば、クロスターゲットやミックス条件を検討し、航空会社の戦略的競合路線については積極的な達成目標を設定することで、その競合路線における目標の達成度に基づいて、別の独占的な路線で追加割引をもらえるかもしれません。独占的路線の航空会社または国の代表的な航空会社はほんの少しのチケット購入時の割引しかないかもしれませんが、他の航空会社はキャッシュバックをしてくれるかもしれません。
ジョイントベンチャーを2社選ぶことは目標達成という視点からは最適な選択肢になりますが、すべての企業ができるとは限りません。それぞれの企業文化や出張の目的を考慮し、企業がより厳しい方法を選べるかよく考えることが大切です。支出先をまとめるためには、出張管理部署は出張規程の中で指定の航空会社を選ぶことを厳しく出張者に義務付けなくてはいけません。指定航空会社以外の予約については精算をしないなどの規程の変更をする方法もありますが、そこまでの変更がすべての企業で可能という訳ではありません。またグループ会社の中で違う規程が存在している場合もあるでしょう。規程に従っているかどうかのチェックはセールスやマーケティングチームではなく監査や経理チームが行うと良いかもしれません。
最後に、2社の航空会社を指定する場合に、特に指定以外の航空会社を利用している出張者が指定の航空会社と良い関係を築くサポートをすることが大切です。指定の航空会社へ出張者をシフトするためであれば、何でもするという強い気持ちがなければ、このような変化を起こすことは非常に困難です(ステータスマッチを受け入れる、主要な予約者に航空会社のセミナーを実施する、出張者からの免除申請や頼みごとを引き受けるなど)。
支出分析、コスト削減分析、行動分析、シフト分析など様々な方法で最適な航空会社のシェアバランスを探すことが支出を最適化する鍵です。購入時における管理は出張者と購入行動を管理するのに必要です。
ジョイントベンチャーの中には小規模の企業に向けたプログラムやゴール設定がない、または低率の(通常2%)購入時割引しかない契約もあります。これらは交渉不可ですが、2社とジョイントベンチャー契約が締結されている状態であれば、それ以外の航空会社の削減に利用できます。そのほかに企業が購入前から事前にお金を預けておくという購入前プログラムというものも良いかもしれません。このようなプログラムは目標設定がありませんが、契約で定められた目標を管理する苦労を軽減するかもしれません。出張パターン、出張者の行動傾向、出張規程にもよりますが平均7%程度の割引を獲得するためにこのようなプログラムを運用することは非常に重要です。
その他カバレッジと価値のバランスをとる戦略としては、ローカル契約からグローバル契約に変更してグローバル全体の支出を利用して全航空会社を対象にした入札をするという方法があります。特定の航空会社を選ぶのではなく、すべての航空会社の入札価格が予約ツールにローディングされ、企業はすべてのコスト削減の機会を享受することになります。アメニティーやソフトサービスも定量化することでトータルコストを一覧することができます。
結論と提案
上記で述べたようにアメリカの航空業界では主要4航空会社がアメリカ国内の80%のキャパシティを占めています- ハブ方式のアメリカン航空、ユナイテッド航空、デルタ航空、とポイントトゥポイント方式のサウスウェスト航空です。残りの20%のキャパシティ(アラスカ航空、ヴァージン・アメリカ航空など)の中で整理統合が起きたとしても、この4社は支配的でしょう。飛行機プログラムに明確な価値とリターン、購入時のコントロール、しっかりとした出張規程がある限り、企業の指定航空会社の数を整理することは、整理統合されている航空業界においては自然とフィットした形です。
航空会社との契約を管理することは簡単なことではありません。そのため、少数のグローバル航空会社と契約をし、グローバル航空会社がカバーしていない部分を地域的な低コストの航空会社によって補完する方向が望ましいです。小さな航空会社が収益性の高い路線のボリュームを吸い上げすぎない限り、大きなジョイントベンチャー航空会社と程よいバランスを保ちます。このことは既存の航空会社が乗り継ぎでしか運行していなかったルートを低コスト航空会社がノンストップで運行している場合や特定の航空会社が特定の地域をより良くカバーしている場合(香港、シンガポール、ドバイ、アブダビ、など)にも当てはまります。
今日の環境下において、企業は航空会社との契約上の目標を達成することに大きな努力を払わなくてはなりません。航空会社は、目標達成しなかった場合には懲罰的措置(割引の削減、契約書の破棄)も行います。そのため企業は航空会社との関係や割引、取引を失うリスクから守るために、出張者の行動を管理することで、指定した航空会社の利用を促進する必要があるのです。
整理統合されたプログラムの利点:
・航空会社との契約管理をする労力や時間が少なくて済む。
数社との関係を維持すればよいため、貴重な労働力や時間を規程や出張者の行動、航空会社のサービスなどに注力することができる
・航空会社のシェアバランスを取ることや、契約上の目標値を達成することが可能になる。・支出のシフトを促すためのソフトダラー(訳注:アップグレードサービスなど)が利用できる。
・目標達成した場合、より大きな割引を交渉する機会ができる。
整理統合されたプログラムの欠点:
・出張者にとって選択肢が狭まる。
・目標を超えて達成した際の報奨がない航空会社がほとんど。
・提案された商品と実際の価値に違いがある。
・すべての支出が割引の対象ではない。
出張管理者は航空会社の整理をすることによるメリットを現状と比較して評価する必要があります。また、企業は販売時のコントロールができることを前提として、様々な戦略に対応できる最高レベルの規程とコンプライアンス体制を築くことが必要です。
*本コラムはGBTの原文(米国)の日本語サマリーで、日本の状況とは異なる場合があります。
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